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当時、小説サイト「アエーマ」に投稿し、かなりの好評価を頂いた作品です。
当時の思い入れもあるので、ガラクタの中から発掘して記事として残す事にしました。
最初にSHAREを、そして駄文とも言うべき長編を投稿し、そのインターバルとして思いつきで書いたものなのですが、それが幸を奏し贅肉の無い作品として纏まってくれたんだと思います。
(記 2007年10月)
隣り町まで。ええ、バスターミナルビル前まで。
いやあ、タクシーの運ちゃんってのも大変な仕事みたいだね。
こんな時間帯、お客も少ないでしょ。やっぱり稼ぎ時は夜かな?
わたしくらいだね。こんな時間帯に乗っているのは。退屈しのぎにわたしの話を聞いてくれるかな?
ずうっと運転ばかりをしていて退屈でしょう。いや、大した事じゃあないんだけどね。
昔からわたしは、ゲンを担ぐ方でね。
特に、乗用車に付いている時計。これが、またよく当たるんだ。例えば、宝くじを当てた時、あれは、そう、去年の夏だったかな。会社の帰りに、晴れ渡った空を見つつ車を走らせてて、ふと備え付けの時計を見た時さ。時刻は午後七時七分七秒だった。スロットでスリーセブンを当てた気分だったよ。そのまま上機嫌で家に帰ったさ。
そして次の朝。ちょうど休日でわたしはゴロゴロしてたんだが、妻がいきなりわたしのところへ飛びこんできて、わめき散らすんだよ。宝くじが当たったって。なんと四百万も。
その金で古くなっていたパソコンを一新。妻もブランド物のバッグを買えたって喜んだよ。あと、息子にもゲーム機を買ってあげたっけ。いろいろと残ってたローンも少しだけ軽くなったよ。他に、あれは冬だったな。寒い風が吹く空を見つつ、何気なく時計を見た時さ。日曜日の朝から家族で遠出をしようと車を走らせた時だけど、その時なんと午前九時九分九秒でさ。「キュウビョウ」ってくらいだから、正直その時恐ろしくてね。
気になったから次の週に病院に行って、精密検査を受けたんだ。妻から気にし過ぎだよって馬鹿にされたけど、その甲斐あって見つかったんだな。大腸にポリープが四つも。いや、正直震え上がったよ。
いや、早めに見つかってよかったよかった。そうだなあ、他に例をあげれば。あ、そうだ。
あれは春の事だったな。息子が小学校に入学した季節だった。その時わたしは入学のお祝いにと、息子におもちゃを買ってあげようと思ったんだよ。のどかな桜並木を見つめて、何気なく時計を見たら、その時午後一時一分一秒だった。
息子と一緒におもちゃ売り場に向かったら、なんと累計十万人目のお客様という事で、景品を頂いたんだよ。なんと息子が欲しがっていたおもちゃだったんだ。ただで手に入ったから嬉しかったね。
一番というわけじゃなかったけどね。あれは一番になった気分だったよ。息子も大喜びさ。
それから、ああ、あれは今ごろの季節だったな。
え?
なんだって?
そんなに時計ばかり気にしすぎると事故に遭うって?
いや、まあ……。
だから事故に遭ったんだけどね。
情けない事に、さっき気付いたんだよ。いちおう、家族の顔を見に、今から家に帰るところでね。
あの時分も、秋真っ盛りでねえ、紅葉の山々がここからでも見えるでしょう。それを見つめながら車を走らせてたんだ。そして何気なく時計を見たら、午後四時四十四分四十四秒でね。そして前を見ると……。
なんだい?
ちょっと、わたしをそんなに見ないでくれないかな。失礼な。
あ、前を見ないと危ないですよ。
ほら、トラックが……。
(記 2001年2月19日)
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